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クラリティ法案が頓挫してもビットコインは上がるのか 焦点は金利とETF
概要
- ビットコインはクラリティ法案の遅れにもかかわらず約38%上昇し、すでにETF・先物など制度金融の投資基盤に沿って値動きしていることが示された。
- 専門家は、規制法案がビットコイン価格に及ぼす直接的な影響は限られ、焦点は金利と現物ETFへの資金流入にあると指摘した。
- 米連邦準備制度理事会の利上げに加え、現物ETFの純流出、ステーブルコイン供給と企業買いの停滞が、新規需要の不足とビットコイン下落の要因になっていると分析した。
期間別予測トレンドレポート


立法にブレーキでもビットコインは38%上昇
ビットワイズ、「低迷長期化」見通しを修正
ETF・先物など投資基盤はすでに整備
金利と機関資金の流入がカギ

米暗号資産市場構造法のクラリティ法案について、上院での審議にブレーキがかかり、ビットコイン(BTC)の反発期待も試されている。もっとも、法案成立の有無をビットコイン上昇の決定条件とみるべきではないとの指摘が出ている。ビットコインはすでに制度金融の投資基盤を備えており、規制変更よりも金利や実際の資金流入に大きく左右されるためだ。
立法の遅れを懸念していた専門家も見方を変え始めた。ビットワイズのマット・ホーガン最高投資責任者(CIO)は9月16日の投資家向けメモで、クラリティ法案が不成立になれば暗号資産市場の低迷が長引くとしていた従来の見解を修正した。法案の年内成立の可能性が低下する間も、ビットコインは上昇し、金融会社の市場参入も続いた点を重視した。
立法期待しぼんでも価格上昇、見方変えたウォール街

クラリティ法案は9月15日、米上院で審議を前進させるための手続き採決を通過できなかった。賛成は49票にとどまり、必要な60票を確保できず、年内立法の見通しは暗くなった。
これまで金融界では、立法の遅れが機関資金の流入を遅らせ、価格上昇の重荷になりかねないとの懸念があった。シティは3月、米国の暗号資産関連立法の遅れなどを理由に、ビットコインの12カ月目標価格を14万3000ドル(約2230万円)から11万2000ドル(約1750万円)へ引き下げた。当時、シティのアレックス・サンダース戦略担当者は、規制変更が市場参加の拡大と資金流入を促す一方、2026年に米国で立法が実現する可能性は低下していると説明していた。
だが足元では、法案処理が遅れてもビットコインの上昇基調は続くとの見方が浮上している。ホーガンCIOも1月時点では、法案が不成立になれば暗号資産市場の冬がさらに6週間続くと予想していた。ただ今回のメモでは、「もはやそれを最も可能性の高いシナリオとはみていない」として、従来判断を修正した。
見方を変えたきっかけは価格だった。ビットコインは7月1日に約5万7950ドル(約903万円)だったが、9月4日には8万ドル(約1247万円)を上回った。一方、予測市場ポリマーケットで取引されるクラリティ法案の年内法制化確率は、同じ期間に39%から18%へ低下した。立法期待が後退する間に、ビットコインはむしろ約38%上昇した計算になる。ホーガンCIOは、上昇相場が法案成立にかかっていたなら、成立確率の低下とともに価格も下落していたはずだが、実際には逆の動きだったと分析した。
ウォール街の動きからも同じ流れが読み取れるという。ホーガンCIOは、ロビンフッドの独自ブロックチェーン立ち上げ、モルガン・スタンレーのソラナETF投入、米証券保管振替機関(DTCC)によるトークン化株式の取引清算を挙げた。主要金融会社が議会の立法を待たず、暗号資産事業を拡大しているという見立てだ。
さらに、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)によるルール整備が、この流れを下支えするともみている。法案処理が遅れても、規制当局の後続措置で事業環境が改善する余地があるためだ。ただ、法案が成立していれば投資家心理や価格により追い風だったとの判断は維持した。立法の効果は認めつつも、上昇相場の必須条件とする見方からは後退した。
「すでに制度圏に定着」 アルトコインとは法的地位が異なる
こうした分析の背景には、ビットコインと他の暗号資産では規制環境が異なるとの認識がある。クラリティ法案は、暗号資産の分類基準やSEC・CFTCの監督範囲を定め、取引所や仲介業者などの営業ルールを整える法案だ。資産の発行と取引を巡る不確実性の低減に主眼を置く。
もっとも、ビットコインは米国ですでに商品として扱われている。SECは2024年1月、ビットコイン現物上場投資商品(ETP)の上場と取引を承認した。機関投資家が証券口座を通じて投資できる仕組みは、法案成立に先立って整っていた。
ブルームバーグのETFアナリスト、ジェームズ・セイファート氏も、このためクラリティ法案がビットコイン価格に及ぼす直接的な影響は限られるとみる。同氏は、ビットコインにはすでに商品としての地位に加え、規制下の先物市場、現物ETF、機関向けカストディー体制が整っていると指摘した。そのうえで、法案が通らなければ機関投資家がビットコインに投資できないわけではないと語った。
カギは「金利」と「現物ETFへの資金流入」

専門家がビットコイン反発の条件として挙げるのは、金利と現物ETFの資金動向だ。
BTCマーケットのアナリスト、レイチェル・ルーカス氏は、足元の市場は政策期待より金利に左右されているとし、今後の金利の道筋とETF流入の回復を見極める必要があると指摘した。アーティック・デジタルのリサーチ責任者、ジャスティン・ダネタン氏も、ビットコインはクラリティ法案がなくても過去最高値を記録してきたとして、金利と金融環境の重要性を強調した。
実際、金融政策環境は重荷になっている。米連邦準備制度理事会(Fed)は9月16日、政策金利を0.25ポイント引き上げ、年3.75〜4.00%にした。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、インフレ率がなお高く、目標水準への回帰速度を高めるため利上げを実施したと説明した。
新たな買い資金も鈍っている。オンチェーン分析会社グラスノードが9月16日に公表したリポートによると、米国のビットコイン現物ETFは9月上旬に約10億ドル(約1560億円)を集めたが、9月8〜14日には約3億3400万ドル(約521億円)の純流出に転じた。法案採決前から資金の流れは弱まっていたことになる。グラスノードは、ステーブルコイン供給の増加や企業のビットコイン購入も停滞したとし、新規需要の不足がビットコイン下落につながったと指摘した。
立法の遅れは制度整備の全面停止を意味するわけではない。JPモルガンはリポートで、今後は市場の関心がSECとCFTCのルール整備に移ると分析した。ただ、行政機関のルールは次期政権で変更されたり、司法判断で制約を受けたりする可能性があり、法律に比べて安定性は劣るとも付け加えた。そのうえで、クラリティ法案は長期的な規制の不確実性を和らげ得るが、ビットコインが持続的に反発するには、投資家が実際に資金を投じられる環境の改善も欠かせないと結論づけた。