概要
- 米財務省は、一般勘定(TGA)の資金を活用した長期国債のバイバックで長期金利の低下を促している。
- 市場では、財務省によるバイバック拡大が「財務省版の量的緩和(QE)」につながり、政策の信認と予見可能性を損なうとの懸念が広がっている。
- シティグループやスタンリー・ドラッケンミラー氏は、膨らむ政府債務と財政赤字のもとで人為的に金利を抑え込むことはリスクを高めると指摘した。
期間別予測トレンドレポート



米国で、連邦準備理事会(FRB)が政策金利の誘導目標レンジを定め、市場が長期金利を決めるという従来の金利運営の構図が揺らいでいる。ホワイトハウスの圧力や意思疎通の縮小、インフレ対応を巡る論争でFRBの動ける余地が狭まる一方、米財務省が国債の満期構成や需給を調整し、長期金利の低下を促しているためだ。市場では「財務省版の量的緩和(QE)」への警戒が強まっている。
米CNBCは8月24日、米財務省が一般勘定(TGA)にある約9400億ドル(約150兆円)の資金を長期国債のバイバック(買い入れ)に充てる案を検討していると報じた。バイバックの規模が膨らめば、流通する長期国債が減り、価格上昇を通じて金利が低下する可能性がある。
米財務省は8月20日、長期国債利回りが19年ぶりの高水準まで上昇した後、バイバックの規模を従来の20億ドル(約3180億円)から少なくとも40億ドル(約6360億円)に引き上げると明らかにした。その後、スコット・ベッセント財務長官が国債売りを仕掛ける投資家をけん制する発言をした。さらに8月24日にはTGA活用の検討が伝わり、市場では「FRBに代わって財務省が金利対策に乗り出した」と受け止められた。
ただ、政策効果への期待より副作用への懸念が大きい。米長期金利の上昇は、膨らむ政府債務と財政赤字を背景とするリスクプレミアムの拡大が主因で、財務省は短期策で市場を脅しているだけだとみる向きが多い。シティグループは8月24日、「バイバックを実施しても、赤字を埋めるには結局、国債発行が必要になる」と指摘した。
異例の措置が続けば、政策運営の信認と予見可能性が低下するとの懸念もある。市場参加者が国債発行額の想定外の変動を織り込み、長期国債の購入により高いプレミアムを求める可能性があるためだ。デュケイン・ファミリーオフィスのスタンリー・ドラッケンミラー会長は「金利を人為的に抑え込むことは、かえってリスクを高める」と述べ、「ファンダメンタルズに逆らって価格を守ろうとする政府は、常に敗れる」と強調した。
FRBとの足並みの乱れも市場の懸念材料になっている。FRB内部では、物価を抑えるため政策金利を引き上げるべきだとの声が強まっている。そうした局面で財務省が長期金利を押し下げるのは通常の対応ではない。8月27日から8月29日まで米ワイオミング州ジャクソンホールで開くFRBの年次シンポジウム「ジャクソンホール会議」に注目が集まっている。
ニューヨーク=ファン・ジョンス特派員 hjs@hankyung.com
Korea Economic Daily
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