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米長期金利、財務長官のけん制でも再上昇 ビットコイン急騰

出典
Korea Economic Daily

期間別予測トレンドレポート

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効果は1日と持たなかった米国債買い戻し拡大

ベッセント氏「さらに増やす」 「トレジャリー・ツイスト」にも言及

「米政府は市場の知らない情報を持つ」

「米政府に逆らうな」との警告にもかかわらず

長期金利は上昇を再開し、ビットコインは急騰した

債券・資産市場でいま何が起きているのか

ベッセント米財務長官は8月20日、長期国債の買い戻し額が1回当たり40億ドルを上回る可能性があると述べた。資料:CNBC
ベッセント米財務長官は8月20日、長期国債の買い戻し額が1回当たり40億ドルを上回る可能性があると述べた。資料:CNBC

「市場参加者は考える必要がある。米政府が市場の知らない何かを把握しているのではないか、と」

米長期金利の上昇を抑える役割を担うベッセント米財務長官は8月20日、事実上の対市場宣言を発した。長期国債の買い戻し額を1回当たり20億ドル(約3180億円)から最低40億ドル(約6360億円)へ、2倍超に増やすと発表してからわずか1日後のことだった。

8月19日、買い戻し発表直後に急低下した後、わずか1日で再び上昇した米10年債利回り。資料:CNBC
8月19日、買い戻し発表直後に急低下した後、わずか1日で再び上昇した米10年債利回り。資料:CNBC

前日の「サプライズ」買い戻し発表で7〜10ベーシスポイント低下した長期金利は、すぐに反転した。流動性の乏しい米30年債利回りは、発表前の5.28%台から発表後に5.18%まで低下したが、その後は5.25%台を回復した。市場の指標である10年債利回りも4.69%→4.63%→4.71%と、かえって上昇した。

これを受け、ベッセント氏は再び前面に出た。CNBCで「1回当たりの買い戻し額は40億ドルより大きくなる可能性がある」「我々には大きな政策ツールボックスがある」と語った。さらに、長期金利を抑えるため短期債の発行を増やし、長期債を買い入れる手法を自ら「トレジャリー・ツイスト(Treasury Twist)」と呼んだ。そのうえで、こうした措置まで辞さない姿勢を踏まえれば、「ベッセント氏は市場の知らない何かを知っているのではないか、と考える必要がある」と述べた。

要するに、長期金利が上がれば財務省がより大規模に直接介入する意思を、いっそう明確に示した格好である。長期国債を売って金利を押し上げる債券市場に対し、「一方向に賭け続ければ大きな痛手を負いかねない」と警告したに等しい。

金利はさらに上昇、金とビットコインも急騰

ビットコイン価格の推移。
ビットコイン価格の推移。

だが、市場はなおベッセント氏の思惑通りには動いていない。発言直後にやや低下するように見えた金利は、すぐに上昇を再開した。10年債利回りは8月22日に4.736%まで上昇した。業績の確かな一部大型半導体株やAIハードウエア株を除き、株式相場は再び上値の重い展開となった。

一方、ドルは下落基調が続いた。金やビットコイン、エネルギー、商品市況は上昇した。とりわけビットコインは2日で2割近く急騰し、5月以来初めて7万8000ドル(約1240万円)を上回った。

通常、金利上昇は利子を生まない金やビットコインには逆風とされる。にもかかわらず、金利が上がる局面でドルが下落し、金やビットコインが上昇している点は、今回の金利上昇の性格が従来と異なることを示すサインである。

債務危機を継続的に警告してきたレイ・ダリオ氏はこの日、買い戻し拡大について「米財政のストレスが臨界点に近づいているシグナルだ」と指摘した。さらに「このままの軌道なら3年以内に危機が来る可能性がある」との見通しを示した。そのうえで、債券の組み入れ比率を下げ、金をポートフォリオの10〜15%程度保有し、これにビットコインを少量加えることはあり得ると語った。

昨年ウォール街を席巻した「デベースメント・トレード(Debasement Trade)」を想起させる動きでもある。巨額債務を抱える政府が財政健全性を損ない、通貨価値を希薄化させるとの懸念が強まる局面で、資金が法定通貨の外にある価値保存手段へ逃避する取引である。こうした地合いが広がると、利回りが高くても長期国債への投資を避ける投資家が増える。結果として金利には上昇圧力がかかりやすい。

弱まる米国債の「安全プレミアム」

最近の金利上昇には複数の要因がある。①第1にインフレ懸念である。イランと米国の交渉は妥結の兆しがなく、国際原油価格もなお高水準にある。当初市場が見込んでいた物価安定の道筋が揺らぎ、米連邦準備理事会(FRB)が早ければ9月にも利上げに動くのではないかという不透明感が払拭されていない。

米10年国債利回り(赤線)は、国際原油価格とエネルギー商品バスケット物価に連動して急上昇した。資料:野村証券
米10年国債利回り(赤線)は、国際原油価格とエネルギー商品バスケット物価に連動して急上昇した。資料:野村証券

ベッセント氏は「食品とエネルギーを除くコアインフレは、財・サービスの双方で低下している」と強調した。さらに「エネルギー価格上昇の2次波及効果がコアインフレに広がっている兆候は全く見られない」と付け加えた。もっとも、イラン情勢が解決し、物価の下向きトレンドが改めて確認されるまでは、債券市場の疑念は簡単には消えそうにない。

②より根本的な問題は財政赤字である。

各国政府は利払い費や国防費、高齢化に伴う福祉支出、各種減税やAI産業政策の財源を賄うため、国債発行を増やしている。政治的に不人気な緊縮策を正面から唱える国は少ない。

その負担はそのまま金利上昇につながる。債券投資家は大量供給を引き受ける見返りとして、より高い利回りを求める。将来も供給増が続くと見込めば、いまの時点から国債価格の下落、すなわち金利上昇に賭ける動きが強まる。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)のリカルド・カバジェロ教授は、この変化を「安全プレミアム(safety premium)」から「吸収プレミアム(absorption premium)」への転換と説明する。かつては米国債が世界で最も安全な資産とみなされるがゆえに、投資家は低い利回りでも受け入れた。だが今は、市場にあふれる国債を吸収する対価として、むしろ優良社債より高い利回りを求めているという。教授は2015年以降の米国債利回り上昇2.5ポイントのうち、30%に当たる0.75ポイントがこの要因によるものだと推計した。

この負担は償還期間が長いほど大きい。今後数十年にわたるインフレと国債供給の不確実性を引き受ける分、より多くの補償を求めるからだ。短期金利より長期金利の上昇が急な理由でもある。これは米国特有の現象ではない。日本、ドイツ、英国でも長期・超長期国債の利回りは数年ぶり、あるいは数十年ぶりの高水準に跳ね上がっている。

世界的にみて、残存期間20年超の長期国債利回りの上昇が加速している。資料:ブルームバーグ
世界的にみて、残存期間20年超の長期国債利回りの上昇が加速している。資料:ブルームバーグ

③AI投資に向けた企業の記録的な資金調達も、国債利回りを押し上げる構造要因として浮上した。

バークレイズによると、米企業の今年の投資適格社債発行額は1年で32%増え、過去最大の1兆9000億ドル(約302兆円)に達する見通しだ。各国政府が記録的な財政赤字を埋めるため国債を大量発行する一方で、巨大テック企業やハイパースケーラーも、AIデータセンターや半導体、電力インフラへの投資資金を借り入れようとしている。

一部投資家は、いまや米政府よりAI企業を選び始めている。ダブルライン・キャピタル(DoubleLine Capital)のジェフリー・シャーマン副CIOは「長期国債利回りの上昇は、民間のAI投資と政府財政が債券市場で競合しているためだ」と分析した。さらに「30年間米政府に資金を貸すのか、5年間マイクロソフトに貸すのかという選択肢が生まれれば、かなりの投資家はマイクロソフトを選ぶだろう」と話した。企業は少なくとも、資金を使えばその分だけ売上高が生まれることが見込めるからだという。

FRBではなく米財務省が「ツイスト」

「米国第一の国債セールスマン」であるベッセント氏は、こうした流れを放置できない。7月末に米国が日本政府と歩調を合わせ、円防衛のため為替市場介入に動いたのも同じ文脈にある。日本が円買い資金としてドルを確保するため、米国債を大量売却し、それが米金利まで押し上げる事態を防ぐ狙いがあった。

今月初めに示された第3四半期の国債発行計画では、今後の長期債発行を減らす可能性をにじませる表現も見られた。代わりに短期債発行を増やす構えである。市場に出回る長期債の供給が減れば、長期債価格を押し上げ、利回りを低下させやすい。

ベッセント氏はバイデン前政権時代、イエレン前財務長官がこの戦略を使った際、「短期債への過度な依存はロールオーバーリスクを高める賭けだ」と厳しく批判していた。だが、トランプ政権が発足すると、この戦略を引き継いだ。

今後は短期債の比率をさらに大きく高める可能性もある。この日のインタビューでベッセント氏が自ら言及した「トレジャリー・ツイスト」がそれに当たる。

トレジャリー・ツイストは、かつてFRBが実施した「オペレーション・ツイスト」の主体を財務省に置き換えた概念である。オペレーション・ツイストがFRBによる短期国債の圧縮と長期国債の買い入れを通じて長期金利の低下を狙う政策だったのに対し、トレジャリー・ツイストは、財務省が短期債の発行を増やし、その資金で長期債を買い戻す「年限の乗り換え」である。

狙いは同じだ。市場に流通する長期債の供給を減らし、長期金利を抑え、企業投資や住宅市場にかかる負担を和らげることである。ケビン・ウォーシュFRB議長がバランスシート拡大に慎重ななか、財務省が「ツイスト」の主役に立とうとしている構図だ。

買い戻し拡大は、国債発行残高全体に対してなお2.4%にすぎず、市場への影響は限られる。これに対し、2011〜12年のFRBのオペレーション・ツイストでは買い入れ規模が最大19%に達した。財務省単独でその水準の長期債を吸収するには、発行年限の構成そのものを短期債中心に切り替える必要がある。

エバーコアISI(Evercore ISI)のクリシュナ・グハ副会長は「苦境に陥った国はしばしば短期債発行に依存する」と指摘した。さらに「米国は他国と違うと考えがちだが、その違いが永遠に続くわけではない」とくぎを刺した。

ベッセント氏の処方箋は「成長で債務を薄める」

ベッセント氏も、短期債依存を無制限に高められないことは理解しているはずだ。だからこそ、まず打ち出したのが買い戻し拡大と口先介入だった。

ただ、この「ベッセント・プット」も繰り返されるにつれ、効力は次第に薄れている。むしろ金利上昇を助長する副作用すらあり得る。④投資家の信認にひびが入りかねないためだ。

ジェフリーズ(Jefferies)のトーマス・サイモンズ米国担当チーフエコノミストは、今回の買い戻し拡大の発表手法そのものを問題視する。わずか2週間前に四半期発行計画を示した際には一切触れず、その後に不意打ちで計画を変更したのは、財務省が数十年守ってきた「定期的かつ予見可能(regular and predictable)」という債務管理原則を、自ら損なう行為だという。

グハ氏は、これを米国債のショート投資家を不意に攻撃して損失を与え、一方向への偏りを防ぐための「戦術的ゲリラ作戦」と表現した。ただ、ゲリラ戦は永続できない。金利の急騰を抑えることはできても、「ファンダメンタルズに沿って決まる数カ月先の金利水準そのものに持続的な影響を与えるのは難しい」という。

40兆ドルを超えた米国の公的債務。資料:ブルームバーグ
40兆ドルを超えた米国の公的債務。資料:ブルームバーグ

JPモルガン(JPMorgan)の金利ストラテジスト、ジェイ・バリー氏も「実質的な財政健全化がなければ、市場は買い戻し拡大を信頼しない」と警告した。さらに「財務省が正攻法を避け、予見可能な原則からさらに離れれば、期間プレミアムと長期金利は一段と上昇し得る」とみる。

もちろん、ベッセント氏自身も買い戻しだけで債務問題を解決できるとは考えていない。トランプ政権発足直後から、「成長によって債務から抜け出す(grow our way out)」ことが根本解決策だと一貫して主張してきた。米経済と税収が債務より速く拡大すれば、債務の絶対額が増えても、国内総生産(GDP)比の負担は下げられるという理屈である。

今回のCNBCインタビューでもベッセント氏は「40兆ドル(約6358兆円)の国債残高は、それ自体では大きな意味を持たない。成長を通じて債務負担を脱することができる」と強調した。最近の財政赤字拡大は、企業投資を促すため税制優遇を拡充した結果だと説明した。短期的には税収を減らしても、長期的には生産性と課税基盤を広げる「将来成長への投資コスト」だと位置づける。「国家の富を左右するのは、結局、資本の税引き後収益率をどこまで高められるかだ」というのが同氏の考え方である。

「さらに深刻化すれば、結局FRBが動く」

企業がAIやデータセンター投資のため巨額の社債を発行している結果、目先では「政府と企業のあいだで資本を争う短期的な競合」が起きている事実も認めた。もっとも、その資金が生産性向上につながれば、供給力を高め、物価を押し下げる「ディスインフレ的な成長」として返ってくると主張する。ケビン・ウォーシュFRB議長の見方にも近い。

ベッセント氏は「近くホワイトハウス行政管理予算局と財政健全化策を協議する」と明らかにし、財政引き締めも並行して進める考えを示した。さらに「必要なら債券市場の問題を巡ってFRBと協力する」とも述べた。

市場の一角では、いまの金利上昇が制御不能になれば、結局はFRBが直接介入せざるを得ないとの見方がある。野村証券のクロスアセット戦略家、チャーリー・マクエリゴット氏は「買い戻し拡大は銃創にばんそうこうを貼るようなものだった」と評した。さらに「インフレと金利上昇が実体経済にまで深刻な打撃を与える水準に達すれば、FRBは最終的にイールドカーブ・コントロール(YCC)や直接的な量的緩和(QE)に踏み切る可能性がある」と主張した。

ベッセント氏「いまはすべてノイズ」

「成長で債務を薄める」というベッセント氏の論理そのものには整合性がある。問題は、市場がその時間軸をどこまで待てるかだ。生産性向上と税収拡大には時間がかかる一方、増え続ける国債・社債の供給、膨らむ利払い費、インフレ圧力は足元で進行している。

投資家は、今回の金利上昇が一時的なものなのか、それとも5%金利が「新常態」へ移る過程なのかを神経質に見極めている。専門家は、まだ国債市場の構造的な亀裂を論じる段階ではないとみる。シャーマン副CIOは、米10年債利回りが5%を突破し、その水準に定着するかどうか、さらにイールドカーブ全体が切り上がるかをまず確認すべきだとみている。

絶対水準と同じくらい、上昇のスピードも重要である。米経済成長が続くなかで金利が秩序立って上昇するなら、資産価格も時間をかけて高金利に適応できる。逆に短期間で急騰すれば、株式や社債など他の資産でも同時的なデレバレッジを引き起こしかねない。

金利上昇の原因を見極めることも欠かせない。高金利が定着するほど、株式市場では漠然とした成長期待より、実際の生産性とキャッシュフローを証明する企業への選別が強まる可能性がある。また、政府債務や通貨価値への不信が金利を押し上げるなら、金やビットコイン、商品など、ドルの外にある価値保存手段へ資金が向かうデベースメント・トレードも強まり得る。

ベッセント氏は「8月で市場参加者の手が空いており、市場が性急に反応している」と話した。買い戻し拡大と口先介入にもかかわらず、金利が1日で反発したことについても、「ノイズにすぎない」と一蹴した。8月24日の記者会見では、イランに経済的圧力をかけるうえで、市場の知らない「非対称情報」を持って臨むとも語った。

まもなく売買高が戻る9月に入る。市場が5%に向けた賭けを続けるのか、それともベッセント氏の「大きなツールボックス」がその勢いを止めるのか。次の焦点はそこにある。

ビン・ナンセ記者 binthere@hankyung.com

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