AIが誤った金融商品を勧めたら誰が責任を負うのか 韓国金融委ガイドラインが示す論点
概要
- 韓国金融委員会は金融分野人工知能ガイドラインで、AIを補助手段と位置づけ、最終的な意思決定の責任は役職員にあるとした。
- このガイドラインを踏まえると、金融事故が発生した際に金融機関・役職員が民事上の損害賠償責任を負う可能性が高まる。
- 各金融会社は、AI活用時の人の関与の度合いやコンプライアンス体制などの内部原則を整えることが、責任問題を簡明に整理する手段になる見通しだ。
期間別予測トレンドレポート


金融委「AIは補助手段、最終判断には人が関与」
金融機関・役職員の責任負担が重くなる可能性
各社は関与の度合いなどのルール整備を
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かつて人工知能(AI)を巡る代表的な論点は、「自動運転車が事故を起こした場合、その責任は運転者が負うのか、製造会社が負うのか」という問いだった。これは自動運転車に限った議論ではない。自律的に判断する機械やソリューションについて、人間が責任を負うべきかという問題を含んでいた。自動運転車が目立つ存在だったため、論争の中心に置かれていただけだ。
足元ではAIの普及に伴い、似た論争が再び浮上している。金融商品を消費者に誤って勧めた場合や、採用手続きが不公正に進められた場合に、誰が責任を負うのかという議論だ。こうした論点を考えるうえで、2026年に公表された韓国金融委員会の「金融分野人工知能ガイドライン改訂版」は示唆に富む。
まず、このガイドラインは金融機関に対する行政監督の枠組みを定めたものであり、民事法上の判断と直接結びつくものではないとみるのが妥当だ。ただ、行政規制の観点から責任の所在を考えると、その趣旨は明確である。
韓国金融委員会はAI活用に関する7大原則の一つとして「補助手段性」を掲げた。ガイドラインは、金融会社などがAIを業務の補助手段として活用する一方、最終的な意思決定とそれに伴う責任は役職員が担うよう内部管理体制を構築しなければならないと明記した。とりわけ高リスクAIについては、内部の役職員など人がAIの作動に介入できる基準を確立し、運用する必要があるとした。
補助手段性の考え方は、AIが出した結果を参考資料の一つとして使いながら、業務処理の全過程で人による検討と判断を続ける点にある。この原則に従えば、AIの利用は金融機関の役職員が担う業務を補完する目的に位置づけられる。そのため、金融事故が起きた際には、金融機関がまず責任を負う方向に帰着する可能性がある。
さらにガイドラインは、AIをあくまで業務の補助手段として位置づけた。AI導入を主導したIT部門よりも、実際に業務で使った業務部門にAI利用の責任が課されると解釈できる。
もっとも、金融機関にとっては割り切れない面もある。AIを導入しても最終的に金融機関や役職員が責任を負うのであれば、事前テストなどをしなくても同じではないかという発想が生じかねない。
ただ、事前テストをはじめとするコンプライアンス上の取り組みは、実際の行政責任を検討する際に十分考慮され得る。AIサービスによる事故を防ぐ事前措置と事後統制は極めて重要だ。
韓国金融委員会のガイドラインは、法律に基づいて制定された法規ではない。したがって、ガイドライン自体が民事責任の有無を判断するわけではない。行政責任とは異なり、金融機関のAI活用に伴う民事上の損害賠償責任を巡る具体的な議論は、なお十分に深まっていない。
AIの出力に誤りがあり、顧客に損害が生じた場合に誰が責任を負うのかを巡る判例や学説はまだ乏しい。責任主体が金融機関なのか、当該業務を処理した役職員なのか、それともAIモデルを提供した外部ベンダーなのかは判然としない。
それでも、AIの出力を最終的に利用し、検証する責任を役職員に負わせる構造は、各金融会社の内規などに実際に反映される可能性が高い。そうなれば、役職員はAI活用の過程に実質的に関与したと評価されやすくなる。結果として、AI利用中に事故が起きた場合、金融機関とその役職員が民事上の損害賠償責任を負う可能性を高める方向に働き得る。
金融サービスは人々に直接及ぼす影響が大きい。現在のAIの普及状況や技術水準を踏まえると、ガイドラインが示した補助手段性の原則は必要な考え方といえる。一方で、この原則を他分野にも導入できるかについては、やや慎重にみる必要がある。
韓国金融委員会が打ち出した補助手段性は、AI利用の責任を考えるうえで一度吟味に値する。人の関与の度合いによって、企業や役職員の責任は変わり得る。各社はその原則を定め、それを徹底できるコンプライアンス体制を整える必要がある。これが、AI利用に伴う責任問題をより簡明に整理する手段になる見通しだ。
〈韓経Law&Biz執筆陣〉ユン・ジュホ 法務法人太平洋弁護士
Korea Economic Daily
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