概要
- イエメンの フーシ派武装勢力 によるリヤド空港攻撃で米国人の死者が出たことで、米国の直接的な 軍事介入 の可能性が高まっていると伝えた。
- フーシ派の連続攻撃を受け、世界石油会議では BP や シェル など主要石油会社の経営陣が出席を取りやめ、リヤド金融地区も在宅勤務に切り替わったと報じた。
- サウジは ビジョン2030 の推進で財政負担が増すなか、財政赤字見通しを引き上げ、2026年の経済成長率が3.6%の マイナス成長 になると見込んだ。
期間別予測トレンドレポート



イエメンのフーシ派武装勢力によるサウジアラビア首都リヤドの空港攻撃で米国人の死者が出たことで、米国が直接軍事介入に踏み切る可能性が強まっている。
ブルームバーグが10月11日に報じたところによると、10月10日にサウジのリヤド国際空港が攻撃を受け、12人が死亡、309人が負傷した。死者には米国人も含まれていた。10月11日にも正体不明の飛翔体が空港を直撃した。直近1週間で4回目の攻撃となった。
サウジ主導の連合軍は、攻撃の背後にフーシ派がいると名指しし、戦争犯罪と位置づけた。フーシ派は10月10日の攻撃については関与を認めなかったが、それ以前の攻撃は自らの犯行だと主張した。サウジの空港に対する追加攻撃も警告している。
今回の事態を受け、米国の軍事介入の可能性も高まっている。ドナルド・トランプ米大統領は10月10日、フーシ派への空爆への参加の可能性を問われ、「そうなるかもしれない。検討してみる」と答えた。米国は前年、フーシ派に対して大規模な空爆を実施した後、停戦で合意した。その後はサウジの軍事作戦に対し、情報共有にとどまる支援を続けてきた。
フーシ派の攻撃は、イエメン内戦が再び激化するなかで起きた。フーシ派は前月、紅海沿岸の港湾都市モカとバブ・エル・マンデブ海峡周辺を掌握した。これに対し、サウジ空軍の支援を受けるイエメン政府軍が反撃に乗り出した。サウジ主導の連合軍は、モカを奪還し、フーシ派の軍事施設の多くを破壊したと明らかにした。
国際危機グループ(ICG)のイエメン担当シニアアナリスト、アフメド・ナギ氏は「フーシ派は攻撃の強度を高め、サウジに空爆停止を迫っている」と指摘した。そのうえで「サウジは今回の攻撃を深刻な挑発と受け止めており、軍事対応を強化する可能性が高い」と分析した。
フーシ派は、2月に米国とイスラエルの対イラン戦争が始まって以降、直接介入を自制してきた。しかし最近の攻撃では、独自の軍事能力を誇示したとの評価が出ている。イランが設計した弾道ミサイルや、現地で組み立て可能な低コストの攻撃用ドローンを使い、サウジの主要施設を攻撃しているという。
サウジは米国製F15戦闘機やパトリオット防空システムなど先端兵器を保有するが、相次ぐ攻撃を防げていない。リヤド国際空港の運営に支障が生じ、数百便の航空機が欠航した。現地の学校もオンライン授業に切り替えた。
新アメリカ安全保障センター(CNAS)のシニアフェロー、ステイシー・ペティジョン氏は「米国でも防げなかったフーシ派の攻撃を、サウジが単独で阻止するのは極めて難しい」と語った。さらに「フーシ派は米国との停戦後、武器と軍事力を立て直したようだ」と付け加えた。
サウジと防衛協力関係にあるトルコとパキスタンの対応も変数となる。両国は8月、サウジと「メッカ防衛同盟」を結んだ。サウジ防衛に向けた兵力・武器支援の可能性を示唆したが、トルコはフーシ派への攻撃作戦には参加しない立場を示している。
フーシ派の連続攻撃は、サウジ経済にも重荷となっている。10月11日に開幕予定だった世界石油会議には、BPやシェル(Shell)など主要石油会社の経営陣が出席を取りやめた。サウジの政府系ファンドや世界の金融会社が入居するリヤド金融地区も在宅勤務に切り替わった。
サウジはムハンマド・ビン・サルマン皇太子が進める「ビジョン2030」の経済多角化事業に巨額の資金を投じてきた。しかし足元では財政負担が膨らみ、海外投資の呼び込みの重要性が一段と高まっている。サウジ政府は今月、財政赤字見通しを引き上げ、2026年の国内総生産(GDP)が3.6%のマイナス成長になると予想した。
元米中央情報局(CIA)の中東担当シニアアナリスト、ウィリアム・アッシャー氏は「サウジは、米国によるフーシ派への直接空爆、防空能力支援、情報共有の拡大を望むだろう」と述べた。あわせて「イエメンでの軍事作戦を強化するための政治的支援も求めるはずだ」との見通しを示した。